<院長からのメッセージ>

1)ストレス
病気は気を病むと書きます。「病は気から」という言葉のごとく、気持ちの持ち様が病気と深く関わっています。様々なストレスにより免疫機能が低下することが知られており、ストレスは万病のもとと考えられています。癌診療の専門家は、怒りの情があると癌が治癒しにくいとのデータを発表しています。ストレスをストレスと感じない様な心の持ち方が、病気を予防するうえで、また病気を克服するうえで、最も重要と言わざるを得ません。現代社会はストレスに満ちており、心の問題を克服するにはものの考え方を変えることが必要です。自分の観念を捨てて、環境を受け入れること、そこから前向きに自分のできることを探していくのです。ちょっとした道端の花や木漏れ日の中に愛を感じられる感性とか、常に感謝の心をもって、周囲の為に奉仕する心で生活することが大切です。相手に何かしてもらいたいという思いが満たされないことがストレスの原因になっていることが多いもの。何をしてもらうかよりも、何をしてあげられるかを考えましょう。過度の期待や見返りを求めずにいられるとだいぶ楽になります。

体を動かすこともストレスの発散にはとても有用です。特に女性は若いころ(閉経まで)の生活習慣が後々の骨粗鬆症の発症に深く関わってきます。閉経までに栄養と運動で骨密度を上げておかないと、閉経後は下がるだけなので、骨粗鬆症を発症してからは薬に頼るしかなくなってしまいます。好きなスポーツならなんでも良いのですが、特にスポーツは苦手という方にお勧めの運動はスクワットです。膝がつま先より前に出ないように腰を落とします。よろけるようなら椅子の背や壁を利用してください。10 回をワンセットとして、一日5~10 セットくらいが目安です。

高齢になってあちこち痛くなってくるとますます運動から遠ざかる傾向にあります。筋肉をつけることにより支えができれば関節痛が和らぎます。膝痛がつらい方は椅子に座って下腿を上下する運動を繰り返すだけでも、太ももの筋肉が鍛えられるので、膝痛が軽減されます。運動しないと筋肉が減るので基礎体温も下がり、病気に弱い体になってしまいます。うっすらと汗をかくくらいの速足で 20 分以上歩く、駅のエレベーターやエスカレーターは使わず意識して階段を使うなど、毎日の生活の中で意識して体を動かす習慣をつけましょう。少しくらいの痛みなら頑張って動くことが重要です。運動することで関節内のヒアルロン酸の産生が増加するという報告もあります。女性なら家事はかなりの労働なので、改めて運動できなくても家事を頑張ることで、運動と同じ効果があります。家の整理整頓、掃除をまめにすることが健康を維持するうえで重要です。汚い部屋にいるだけで、家族もイライラしがちです。家の仕事はお嫁さんだから、何もすることがなくて暇だとおっしゃる高齢者の方は、近隣の掃除を積極的にしたり、地域集会やボランティアに参加するなど、やりがいを感じられる何かを見つけましょう。

部屋に緑や花を飾るアロマの香りでリラックスするなどの工夫も有用です。
体調が悪いとそのことしか考えられなくなり、ますます悪循環に陥りがちです。自分の体のことだけに意識を集中するのではなく、その中でも周囲の人の立場に立って考え、自分にできることを探していくのが大事です。笑顔でいること、ありがとうを伝えることだけでも良いのです。不平不満は健康の敵です。ただし、もちろん医療機関のスタッフには愚痴をこぼしてくださいね。

病院に通っても良くならないときに、こんなにつらいのに医者は分かってくれない、大丈夫と言われるがそんなはずはないと、次々ドクターショッピングする方がおられます。意味がないばかりでなく、時間もお金も無駄になります。セカンドオピニオンを求めるのは良いことなのですが、必ずしも「自覚症状がある=治療が必要である」ではないということです。受け入れることが唯一の解決であることもあります。ただし中には稀な疾患で専門医でないと診断に至らず、長年詐病と言われ精神的に苦痛を受けておられた患者様もおられたので注意が必要ですが。信頼できる医師を見つけて腰を落ち着けて通院することにより、病状の変化に気付いてもらえ、診断に至れるでしょう。

2)高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症、糖尿病などの成人病

いわゆる成人病と言われるものは、ある意味自分で病気を作っている場合も多いのです。食べ過ぎ、飲みすぎ、喫煙、運動不足、体重増加。食事に気を付け、運動して体重を落とした結果、全く薬がいらなくなったという患者様も多いのです。喫煙は百害あって一利なし。喫煙により全身の血流障害が起きるため万病のもとであり、成人病を悪化させます。肺癌のみならずあらゆる癌の発生率を上昇させます。日本人の肺気腫(COPD)は喫煙が原因です。まさに「後の後悔先に立たず」です。アルコールはいわゆる適量(ビールなら中瓶 1 本、ワインならグラス2杯、日本酒なら1合、ウイスキーならシングル2杯いずれか)を超えないこと、飲まない日を作ることです。毎日の飲酒は高血圧の原因です。アルコールはたばこ同様、習慣性を獲得しやすいので、個人的には飲まない方がよいと思っています。
食べ物を一回口に入れたら 20~30 回噛むことを推奨しています。

胃腸への負担を減らし嚥下機能の維持にも有用ですし、肥満予防になります。
病気にならない体つくり、薬がいらない生活は、毎日の生活実践でこそ可能になります。薬を飲んでいるからいいと軽く考えないでくださいね。

3)呼吸器疾患

呼吸器疾患をお持ちの患者様にとって、一番重要なのは風邪の予防です。規則正しい生活、睡眠不足をしない、バランス良い食事をとる、特に旬のものを積極的にとること。冬場は人込みを避ける、手洗いうがいを徹底すること。マスクは自分の息で気道の加温加湿ができるので風邪予防に有効です。それでも風邪をひいてしまったら、早めにかかりつけ医を受診することをお勧めします。アルコール、喫煙はやめましょう。どちらも息切れを増悪させます。

4)高齢者

ご高齢の方は口腔内を清潔にする、義歯を清潔にすることがとても重要です。口腔内の雑菌を誤嚥して肺炎になるリスクが高いからです。加齢により嚥下反射が低下するので誤嚥が起きます。ある程度の年齢になったら特に口腔内を常にきれいにしておきましょう。歯の隙間の食べかすに雑菌が増殖するので歯間ブラシがおすすめです。ただしごしごしやりすぎて歯茎を傷つけないこと。嚥下機能を維持するためにはよく噛んで食べること(一口で 20~30 回噛む)、よく話すこと。話し相手がいないという方は声を出して本を読むことをお勧めします。認知症予防にも良いです。大きな声で歌うこともお勧めです。
食事中にむせて咳き込む方は誤嚥している可能性が高いです。さらさらの水分が誤嚥しやすいので、水分にとろみをつけると誤嚥しにくくなります。食事の時は姿勢を正してテレビや新聞を読みながら食事するのはやめてごっくんとしっかり意識して飲み込むようにしましょう。

5)喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギー疾患

最近の抗アレルギー剤は 1 日一回投与で眠気の起きにくいものが出てきています。喘息の吸入薬も開発が進み、抗アレルギー剤と吸入薬で喘息はほぼコントロールできる時代になってきました。きちんとした自己管理をすれば、かつてのように夜中救急外来を受診して点滴を受けるというようなことにはなりません。吸入薬はステロイドと気管支拡張剤の合剤が一般的になっています。ステロイドに抵抗のある方がまだ多いと思いますが、吸入で使用する場合は吸入後のうがいさえしっかりしていただければ、副作用はまずありません。全身への影響は0と言ってもよいでしょう。私は患者様に説明するとき、火事場で火がくすぶっている状態にたとえてお話ししますが、完全に消した火は風が吹いても燃え上がらないですが、すこし種火が残っていると風が吹けば、再び火事になります。喘息も完全に抑えれば、再燃しにくいのです。頻回の発作で外来点滴していたのに、入院治療して一旦完全に発作を抑えた後は抗アレルギー剤1錠のみで発作を起こさなくなった患者様もいらっしゃいました。

ダニやほこりは生活のなかで除去しきれないものです。人間にとって快適な環境はダニにも快適です。カーペットや畳よりはフローリングが良く、まめに掃除すること。掃除の時は窓を開けて良く換気しましょう。布団は干してもダニは下にもぐるだけで死にません。布団乾燥機の熱でダニを殺しましょう。ダニの死骸もアレルギーの原因になるので、布団用のノズルをつけて掃除機をかけてダニを除去する必要があります。何年も使用した布団なら丸洗いもお勧めです。

花粉の時期は花粉を家の中に持ち込まない工夫が必要です。花粉の時期は洗濯物、布団を風の強い日は外に干さない、帽子、ゴーグル、マスク、ショールなどで体を覆い、玄関先で脱ぐこと。花粉が付きやすいウール素材の衣服は避けましょう。空気清浄器を使う場合にはフィルター部分はもちろん全体をまめに掃除しましょう。空気清浄器やエアコン、加湿器が汚いとかえって過敏性肺炎などの病気になる危険があります。
アレルギーは抗原に感作され続けた結果、ある時閾値を超えた瞬間に発症します。すなわち今アレルギーがない人も汚い環境に居続けると発症するリスクが高まるということです。ただし極端な潔癖症だとかえってアレルギーになりやすいということも言われており、バランスが大事です。

6)最後に

早期発見のために定期健診を受けること、薬は生活実践をしても不十分なところを補うものです。
ただし必要な薬は自己判断で勝手にやめず、きちんと服用しましょう。疑問な点は遠慮せず医師に相談し、なぜ必要なのか納得することが大事です。人間誰しも納得できないことは継続できないからです。

 

<お勧め図書>

幸せはガンがくれた
心が治した12人の記録

著者:川竹文夫
出版:創元社
がんでも長生き心のメソッド
著者:保坂 隆  今淵恵子
出版:マガジンハウス
水は答えを知っている
著者:江本 勝
出版:サンマーク出版
人生がときめく片づけの魔法
著者:近藤麻理恵
出版:サンマーク出版
アンガーマネージメント入門
著者:安藤俊介
出版:朝日文庫
サーバントリーダーシップ入門
著者:池田守男 金井 壽
出版:かんき出版

<病気の理解のために>

 1)肺気腫

日本人の肺気腫の原因は喫煙です。(海外では先天的な酵素異常が報告されています。)喫煙により、肺の組織を溶かす酵素が活性化されて組織破壊がおこり、いったん破壊されると非可逆的な障害を起こします。肺胞壁の破壊により、血液への酸素の受け渡しに時間がかかるので、血流が早くなる原因、運動、入浴、飲酒などで息切れが悪化します。じっとしていればなんともないが、動くと息切れがする、息切れはしばらくじっとしていれば治まるというのが典型的な症状です。入浴すると息苦しくて肩まで浸かれなくなります。

吉村内科 新所沢 呼吸器科 肺気腫

日本呼吸器学会HPより引用

胸部レントゲンで肺の過膨張、横隔膜の平低化、最大呼気での横隔膜の変位の減少、胸部 CTで肺組織の破壊を確認すれば診断できます。初期の肺気腫では禁煙することにより進行を抑制できます。

吉村内科 新所沢 呼吸器科 肺気腫 タバコ

ERCA(環境再生保全機構)HPより引用

肺気腫と診断されたら禁煙が最重要な治療法です。息切れを軽減するためには抗コリン剤の吸入が有用ですが、組織破壊を修復するような薬剤は存在しません。日本人の場合は喫煙しなければそもそも発症しない病気と言ってもよいです。息切れが著しく体動時の低酸素血症が著明な場合は在宅酸素療法がおこなわれます。一定の基準を満たし、医師が必要と認めれば空気中の酸素を濃縮する装置を保険診療で借りられます。

 

息切れ軽減のためのリハビリテーション

呼吸するにも筋肉を使っていますので、息切れを軽減するには呼吸筋のリハビリテーションが有用です。胸とお腹の境にある横隔膜は最大の呼吸筋なので、これを鍛えることにより呼吸が楽になります。

吉村内科 新所沢 呼吸器科 肺気腫 リハビリ

ERCA(環境再生保全機構)HPより引用


一回 20 分ずつ一日 2 回仰臥位になってお腹に1kgの砂糖袋を乗せます(abdominal pad 法)。これだけで横隔膜が鍛えられます。意識して大きく呼吸しようとすると腹筋をつかってしまい横隔膜の訓練にならないことがあるので注意しましょう。
横隔膜以外にも呼吸するには首や肋間の筋肉も使っています。ストレッチで筋肉をほぐし肩甲骨や肋骨の動きを良くしてあげましょう。
肺気腫の患者さんはやせ傾向にあり、よけいに息切れが悪化しやすいです。良質なアミノ酸、たんぱく質をしっかり摂りましょう。

2)気管支喘息、咳喘息

小児喘息があったが、一時期なんともなかったのに、ある年齢になったらまた喘息発作が出るようになったという方がよくいらっしゃいます。既往症が何もないのに急に発症する方も時々いらっしゃいます。ダニやハウスダスト、花粉が原因で発作を起こす方もいらっしゃる半面、血液検査では一切アレルギー物質がみあたらないという方もおられます。喘息発作も自律神経が関与しているので、精神的なストレスも原因になります。以前に家庭内暴力が原因で喘息発作を起こしていた患者様がおられ、外来では点滴が必要な重積発作を起こすのに、一旦入院してストレスから解放されると全く薬なしでも発作が起きないという悲しい事例を経験しました。喘息はある意味精神的な因子が大きい疾患と言えるでしょう。
一旦喘息になったら一生治らないのかという質問を時々受けますが、そんなことはありません。治るという解釈ですが、全く症状がなくなることが治るであるならば、ほとんどの方が治ります。正確にはコントロールできるということですが。
薬を嫌い、少しの発作は我慢するという方がいらっしゃいますが、この考え方は間違っています。完全になにもない状態を維持できるようにするのに十分かつ最低限の薬の量を見つけるというのが正しい考え方です。軽い発作でもくすぶっていると常に気道に炎症がある状態なので、二次的な器質的な変化、(気道粘膜の肥厚や気道分泌腺の増加など)が出てきてしまいます。最近は喘息も自己管理する病気になってきました。 普段はなんともないが、風邪をひいた時や、季節の変わり目などの台風などの気圧の変化によって発作を起こす方も多いです。自分のパターンを知り、発作を起こさないように早めに対処する方法を医師と相談しながら進めましょう。

風邪をひいた後、数か月にわたって咳が持続する、温度差や会話で咳が出るといった症状で呼吸困難や喘鳴がない方、気道過敏といいます。やはり気管支拡張剤やステロイドの吸入薬を使用します。以前に諸検査で異常なく、これらの薬でもなかなか咳が止まらず、ほぼ一年咳が持続した方がおられましたが、なんと温泉に旅行に行ってのんびりしたらぴたっと止まったそうです。これも自律神経、ストレスの関与が大きいことの証ですね。

 
3)高血圧症

血圧とは心臓から全身の組織に酸素を運搬するために必要な血液を送る圧のことです。血管の先の抵抗が高くなればその分高い圧をかけないと抹消まで血液を送れなくなるので血圧が上がります。血管の抵抗が上がる主な原因は加齢に伴う動脈硬化なので(ホルモン異常や腎臓病によるものも一部あります)、一旦高血圧症と診断されると、降圧剤を継続的に内服する必要があります。硬く細くなった血管は若いころの柔軟な血管には戻らないからです。
降圧剤は血管を拡張させたりホルモン調整をしたり心臓に働きかけて血圧を下げます。ただし、肥満のある方は運動して体重を理想体重にもどすだけで血圧が正常化し、薬が不要になることも多いです。肥満があるということは、酸素を送らなければならない組織も多いということ、その分心臓に負荷がかかっているのです。アルコールを毎日飲んでいた方が、禁酒することで血圧が下がることもよくあります
高血圧の食事療法と言えばまず減塩ですが、高齢になると味覚が鈍くなるので塩分を感じにくくなり、薄味にするとおいしくなく食欲がなくなるという方もおられます。塩分を取るならその分汗で体から塩分を出しましょう。運動して汗をかくのが良いですが、サウナなどを利用しても良いでしょう。いずれの場合も水分補給は十分に。
冬場は気温低下とともに抹消血管が収縮するので血圧上昇しやすいですが、夏場は降圧剤がいらない方もよくおられます。病院に行くと緊張して血圧が高いけれど自宅では正常という方もおられます。元来血圧は自律神経の調整を受けていますので、変動しやすいもの。血圧手帳に自宅血圧を記入して医師にみてもらうのが良いです。一般的にはなるべく毎日、起床後 1 時間以内の朝食前と寝る前の 2 回測定していただくのが理想です。座位で測定部と心臓の高さを同じにしてください。動いた直後の血圧が高いのは正常な反応です。5分以上安静にした状態で測定しましょう。会話するだけで血圧は上がりますので、測定中は静かにしましょう。血圧計はできるだけ腕に巻くタイプが正確です。冬場長袖をまくるのが面倒で血圧測定をやめてしまう方がおられますが、血圧は寒い冬場に上昇するので、冬こそ自宅血圧測定をしていただきたいです。よほど分厚いセーターでなければ、多少高めの数値にはなりますが、極端に問題にはなりませんので、服の上からでも測らないよりましです。受診時に同じ服装でいらしていただければ、実際どのくらい高めか確認できますから。
血圧測定は狭い管の中を流れる乱流の音を聞いています。加圧して一旦血流を途絶させ、減圧して最初に血液が流れ始めたところが上の血圧、心臓から駆出される圧を示しています。さらに減圧して乱流が起きなくなったところが下の血圧、心臓の拡張期に血管にかかっている圧です。上の血圧が高いと脳出血、下の血圧が高いと心筋梗塞を起こしやすいです。血圧は年齢にもよりますが、上は 130 台以下、下は 80 台以下にはしておきたいですね。

 
4)脂質異常症

脂質異常症は動脈硬化を進行させます。一言で脂質異常症といっても、高コレステロール血症、高トリグリセライド血症、低 HDL 血症があります。コレステロールはいわゆる動物性の脂など、トリグリセライド(中性脂肪)は甘いものとアルコールが原因で、各々治療薬も異なります。食事療法と運動療法が基本ですが、それらを頑張っても体質的に高い方がおられます。必要に応じて薬を選択します。

 
5)糖尿病

当院で診療しているのはいわゆるⅡ型糖尿病、インスリンはある程度でているが血糖が高い方です。膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖が正常に保たれます。しかし過食などの負荷が持続すると、膵臓に負担がかかり、インスリンの分泌が低下してきてしまい、血糖値が上昇してしまいます。過食をしても大丈夫な人もいますが、糖尿病になるのは体質で、遺伝性があります。
糖尿病の治療は運動と食事療法が基本です。初期の糖尿病は食事療法と運動だけで正常化できます。膵臓に過負荷をかけず、大事に使ってあげれば、インスリン注射をするまでには至りません。体質があるので、一旦血糖が正常化しても食事や運動を意識しなくなると、容易にもとに戻ってしまいます。一旦糖尿病と診断されたら、運動と食事は常に意識しなければなりません。糖尿病というと血糖が高い病気とだけ思いがちですが、実は血管の病気です。
錆びた水道管を想像してみてください。汚い水が流れていると水道管が錆びるように、糖の高い血液が流れていると血管壁がぼろぼろになり、血管が破けたり、詰まったりします。組織に栄養が運搬されなくなるので全身の異常が起きてきます。つまり糖尿病は全身病なのです。

糖尿病で最も気を付けなければならないのが目と腎臓です。どちらも血管が豊富な組織だから、ダメージを受けやすいのです。目の奥の眼底の血管が破れて出血すると、悪ければ失明してしまいます。糖尿病と目はセットだと思ってください。半年から一年に一度の眼底検査は必須です。また眼底の血管の変化をみることで、全身血管の状態も想像できます。初期の眼底出血なら眼科処置で視力低下を免れます。進行した糖尿病の方は運動が眼底出血の引き金になる場合もあるので、定期的な眼底検査は重要です。
腎臓が悪くなると最悪透析になります。尿検査では糖だけでなく蛋白も出ていないかの注意が必要です。
進行した糖尿病で神経へ栄養が行かなくなるとしびれ、立ちくらみなどの神経症状が出てきてしまいます。
初期の糖尿病はほぼ無症状なので、健診を受けなければ発見できません。口渇があり冷たい水を大量に飲む、夜間トイレが頻回で、尿が泡立つ、皮膚がかゆい、インポテンツなどは糖尿病の症状の可能性があります。 自分の力だけで良くするのが難しい病気が多い中で、初期の糖尿病は運動と食事療法をしっかり継続すれば良くなります。自分の努力が直接反映されるのです。症状のないうちにしっかり治療すること、一旦血糖値が正常になっても治ったと思って決して放置してはいけません。良くなっても安心しないで、定期的な検査と運動、食事の管理、場合によっては薬を継続すれば健康を維持できるのです。症状がないからといって放っておくと、気が付いたら失明、透析、下肢の趾の壊疽で切断、立ちくらみやしびれがひどくて起き上が れないなどということになりかねません。
糖尿病の薬というと以前は低血糖が問題でした。また血糖が下がった分、空腹感が増して、食事療法を守りにくいという方もおられました。最近は高い血糖は下げるが低血糖を起こしにくい薬が使用されるようになりました。